アフェリエイト広告を利用しています

朝ドラ ブラッサム

『色ざんげ』のあらすじを解説|東郷青児の実話?宇野千代が描いた恋愛のモデル

宇野千代の代表作のひとつ、『色ざんげ』

妻子ある画家を中心に、何人もの女性が交錯する複雑な恋愛を描いた小説です。しかも主人公のモデルは、宇野千代が実際に同棲していた洋画家・東郷青児でした。

この記事では、

  • 『色ざんげ』のあらすじ
  • 主人公・湯浅譲二と東郷青児の関係
  • 『色ざんげ』はどこまで実話なのか
  • 宇野千代が『色ざんげ』を書いた経緯
についてご紹介します。

宇野千代『色ざんげ』のあらすじ

宇野千代色ざんげあらすじ

『色ざんげ』の主人公は、フランス帰りの洋画家・湯浅譲二です。

譲二には妻と子どもがいます。けれども夫婦関係はすでに冷えきっていました。

妻子は階下、譲二は二階。同じ家にいながら別々の生活を送っています。

そんな譲二のもとへ、見知らぬ女性から毎日のように手紙が届くようになりました。

高尾から届いた恋文

手紙の差出人は、小牧高尾という若い女性です。

高尾は、まだ会ったこともない譲二に熱烈な思いを寄せていました。何度も届く恋文に、譲二も次第に高尾を意識するようになります。

やがて二人は会うようになりますが、高尾は突然姿を消してしまいます。

譲二は高尾を探します。そこで頼ったのが、高尾の友人・西条つゆ子でした。

ところが、高尾を探していたはずの譲二の心は、しだいにつゆ子へ向かっていきます。

西条つゆ子との激しい恋

譲二とつゆ子は、急速に惹かれ合います。

しかし譲二には妻子がいました。さらに、つゆ子の家族も二人の関係に強く反対します。

それでも二人は離れられません。周囲の目を避けながら、関係を深めていきました。

やがて、つゆ子は家族によって譲二から引き離されます。

それでも譲二は諦めません。

つゆ子に会うため嵐の中を出かけるほど、恋はしだいに激しさを増していきます。

とも子との結婚

つゆ子と離れた譲二の前に、今度はとも子という女学生が現れます。

とも子は譲二の絵のファンでした。譲二はとも子と親しくなり、その家庭のあたたかさにも惹かれていきます。

そして話は急速に進み、譲二はとも子と結婚式を挙げることになりました。

ところが、この時点でも譲二にはもともとの妻と子どもがいます。

高尾、つゆ子、とも子、そして妻。譲二を中心に女性たちとの関係が次々と絡み合っていきます。

再びつゆ子へ

とも子との新しい生活も、穏やかには続きません。

そんななか、譲二は再びつゆ子と向き合うことになります。

離れていた時間があっても、二人の思いは消えていませんでした。譲二の心は、再びつゆ子へ向かいます。

そして物語は、譲二とつゆ子が心中を図るところまで進んでいきます。

高尾との出会い、つゆ子との恋、とも子との結婚、そして再びつゆ子へ。

譲二の恋愛は、めまぐるしく形を変えていきます。

けれども『色ざんげ』に描かれているのは、華やかな恋愛だけではありません。

嫉妬、執着、寂しさ、身勝手さ。恋に振り回される男女の生々しい感情まで描かれているところが、『色ざんげ』のおもしろさです。

宇野千代『色ざんげ』の登場人物

色ざんげあらすじ2

物語を理解しやすくするため、主な登場人物を整理しておきましょう。

登場人物 人物像
湯浅譲二(東郷青児がモデル) フランス帰りの妻子ある洋画家
小牧高尾 譲二へ強い思いを寄せる若い女性
西条つゆ子 高尾の友人。譲二が強く惹かれていく女性
とも子 譲二の絵のファン。のちに譲二と結婚する女性

『色ざんげ』は、ひとりの男性だけを描いた物語ではありません。

譲二を取り巻く女性たちも、それぞれの感情に突き動かされながら行動していきます。

東郷青児をモデルにした小説であると同時に、昭和初期を生きる男女の恋愛を描いた群像劇でもあります。

『色ざんげ』のモデルは東郷青児

主人公・湯浅譲二のモデルは、洋画家の東郷青児です。

新潮社も『色ざんげ』について、宇野千代が実際に同棲した東郷青児をモデルに描いた作品と紹介しています。

湯浅譲二のモデルは東郷青児

東郷青児は1897年生まれの洋画家です。若いころフランスへ渡り、帰国後は日本の洋画界で活動しました。

『色ざんげ』の湯浅譲二も、フランス帰りの洋画家として登場します。

さらに東郷青児本人は、『色ざんげ』について次のように語ったと紹介されています。

「この作品は、終りの一行まで、僕が話したことばかりだ」

(引用:新潮社

東郷青児自身の体験や語りが、作品の大きな材料になっていたことがわかります。

『色ざんげ』は実話?

では、『色ざんげ』は実話なのでしょうか。

結論からいうと、東郷青児の実体験を大きな材料にした小説です。

その背景にあるのが、1929年に起きた東郷青児の心中未遂事件でした。

東郷青児の心中未遂事件

1929年、東郷青児は女性との心中未遂事件を起こしました。

二人は命を取り留めます。

当時、宇野千代は別の新聞小説で心中場面を書こうとしていました。そこで、実際に心中未遂を経験した東郷青児本人に心境を聞こうと考えたのです。

宇野千代は後年、このときの行動を「向う見ず」だったと振り返っています。

宇野千代は東郷青児に直接聞いた

宇野千代は、心中を経験したときにどんな気持ちだったのか、東郷青児本人に尋ねました。

そのときのことを振り返り、宇野千代は次のように書いています。

「何と言う人を人とも思わぬ、向う見ずなこと」

(引用:新潮社「波」

それほど大胆な取材でした。

しかし、この取材が二人の出会いにつながります。

世田谷文学館も『色ざんげ』を、東郷青児の情死未遂事件を宇野千代が聞き書きして執筆した長篇小説と紹介しています。

宇野千代はなぜ『色ざんげ』を書いた?

『色ざんげ』が生まれた背景には、宇野千代の作家としての強い好奇心がありました。

そもそも宇野千代が東郷青児に近づいたきっかけは、恋愛ではなく小説を書くための取材だったのです。

心中場面を書くため東郷青児を訪ねた

宇野千代は、心中を経験した人間が何を感じるのか知ろうとしました。

そこで、心中未遂事件を起こした東郷青児へ連絡します。

東郷青児は電話では話せないとして宇野千代を呼び出し、その後、自宅へ招きました。

この出会いをきっかけに二人は急速に親しくなり、そのまま同棲生活が始まります。

世田谷文学館には、『色ざんげ』の自筆原稿や、東郷青児から宇野千代へ送られた書簡も所蔵されています。

東郷青児との出会いが作品へ

宇野千代は東郷青児と暮らすなかで、心中未遂事件について話を聞きました。

その体験をもとに生まれたのが『色ざんげ』です。

宇野千代自身は後年、『色ざんげ』についてこう書いています。

「私の書いたものの中で、一番面白い」

(引用:『宇野千代全集』第三巻あとがき)

ただし、そのあとには「と言うのが世評であることも、皮肉ではないかと思う」と続きます。

東郷青児から聞いた強烈な体験を小説へ仕立て、それが代表作のひとつになったことに、宇野千代自身も複雑な思いを抱いていたことがうかがえます。

『色ざんげ』はどこまで実話なのか

『色ざんげ』を読むときに覚えておきたいのが、モデルが実在することと、すべてがそのまま事実であることは別だという点です。

『色ざんげ』の要素 実話との関係
主人公・湯浅譲二 東郷青児がモデル
心中をめぐる内容 東郷青児の心中未遂体験が下敷き
恋愛のエピソード 東郷青児本人から聞いた話が大きな材料
作品全体 文学作品として構成された小説

東郷青児本人が「終りの一行まで、僕が話したことばかりだ」と語ったほど、実体験が深く入り込んだ作品でした。

ただし、『色ざんげ』は東郷青児の証言録ではありません。

実際の出来事を材料にしながら、人物名や構成などを組み替え、ひとつの小説として作り上げられています。

つまり『色ざんげ』は、「東郷青児の実話そのもの」というより、東郷青児の実体験や語りを材料として宇野千代が仕立てた小説と考えるのがよいでしょう。

朝ドラ『ブラッサム』と『色ざんげ』

2026年9月28日から放送予定のNHK連続テレビ小説『ブラッサム』は、宇野千代をモデルにした物語です。

『色ざんげ』は、そんな宇野千代の代表作のひとつ。新潮社では朝ドラ『ブラッサム』の放送を前に、2026年に新潮文庫として復刊されています。

『色ざんげ』の背景を知ると、宇野千代がただ恋多き人生を歩んだだけではなく、身近な人々の経験まで創作へ取り込んでいった作家だったことも見えてきます。

朝ドラを見るうえでも、宇野千代の恋と創作のつながりを知ることができる一冊です。

 

まとめ|『色ざんげ』のあらすじとモデル

以上、『色ざんげ』のあらすじと、東郷青児との関係についてご紹介しました。

『色ざんげ』は、フランス帰りの妻子ある画家・湯浅譲二と、彼を取り巻く女性たちの複雑な恋愛を描いた小説です。

主人公・湯浅譲二のモデルは東郷青児。東郷青児の心中未遂事件や恋愛体験を宇野千代が本人から聞き、それが作品の大きな材料となりました。

ただし、『色ざんげ』は記録ではなく小説です。

実話と創作が入り混じるところに、『色ざんげ』ならではのおもしろさがあります。

朝ドラ『ブラッサム』でも、宇野千代をモデルとした主人公が、出会いや恋愛をどのように創作へつなげていくのか注目したいですね。

こちらもCHECK

 

参考: 新潮社『色ざんげ』宇野千代
新潮社「新潮文庫メール アーカイブス」
新潮社「波」2026年9月号 河合香織「主語を明け渡さない女たち」 

-朝ドラ, ブラッサム